移住先のニセコ町で見つけた地域課題と好きなことが融合し起業に至るまで/Vol.5 清部陽介さんインタビュー
こんにちは!note担当地域おこし協力隊の伊藤です。
ニセコ町でホットな話題の1つといえば、「移住」や「起業」のはなし。
今回は、ニセコ町地域おこし協力隊でもある清部陽介さんにインタビューをさせていただきました。
ユニークな雰囲気を纏い、知的なオーラを持つ清部さん。
ー移住に興味があるけど、どうするか迷っている。
ー移住先の環境で、いままでやってきたことが活かせるのだろうか?
今回清部さんのストーリーから、読みとれるヒントがあるといいなと思いご紹介します。
「これが好きだ。と言えるものがある人」、「ニセコに移住してみたい人。」ご注目です。
■清部陽介(きよべようすけ)さんにインタビュー
多くの地域おこし協力隊員と共に、町の賑わいづくりや町のイベントサポートをする傍ら、自身のやりたいことを見つけて積極的に取り組む隊員たち。
その輪の中でも、清部さんの周りには笑顔があり、楽しそうな雰囲気を自然と醸し出します。
地域おこし協力隊の配属先業務としては、環境モデル都市、SDGs未来都市に選定されるニセコ町において、持続可能な循環型林業を目指すプロジェクトメンバーとしてお仕事されてます。
むずかしい森林課題に立ち向かっているならお堅いところもあるのかなと思いきや、、
むしろ自然体。
いつも自然体なのです。
「どうしてニセコに移住したのか?」
「なにがきっかけで起業するつもりだったのか?」
…など深掘りして聞いてみたいと思います!
【移住した経緯3つのポイントを語る】
清部さんの移住までの経緯を3つのポイントで整理してみます。
一つ目。奥様との出会い。
二つ目。ハンガリー在住時に起きたコロナショックによる方向性の変化。
三つ目。父になり、より自然溢れる環境での生活を送りたいという想い。そして見つけたニセコプロジェクト。
●出会いが広げてくれた色とりどりの世界
ー3つのポイントに沿ってお話をお伺いします。どうぞよろしくお願いいたします!
早速ですが、現在に至る経緯を語る上で、のちに奥様となる方との出会いが一つ目のポイントということですが、馴れ初めをほんの少しだけお聞きしてもよろしいですか?
はい、よろしくお願いします。
そうですね、知り合った頃の彼女は、北海道札幌の某大学に、”留学”ではなく、”研究員”として来ていた海外の方で、化学博士号を持つ、いわゆる ”リケジョ(理系女子)”でした。
彼女の母国は「サイクルツーリズム」=「自転車で旅をすること」がメジャーなヨーロッパのハンガリーという国で、僕は、自転車を修理したり、組み立てたりと、全ていじれるくらい得意なことで、夢中になれることだったの自然と話が合って仲良くなった感じだったと思います。
一緒に過ごすうちに、絆も当然深まりますし、「これが愛だ」と向こうの人はストレートに伝えてくれますから結婚も自然な流れでした。
当時、意気投合した彼女や仲間たちと、北海道内のいろんな所へ自転車で旅をしていくうちに、同じく旅をするさまざまな人との交流があったんですよね。
ある海外からのツーリストは、日本縦断の途中で自転車が故障してしまい、一旦公共機関で修理できるお店がある市街地まで戻って滞在し、部品がなければ何日も待って、直ったら離脱地点に戻り再スタートするといった話を聞いたりしました。
そんな交流の中で、自分が得意な修理技術を生かせたことが嬉しかったですし、日本を縦断しに来る海外の人は日本をこういう風に見ているんだとか、気付かされたことも多く、僕の中で”世界”に対する様々な視点が広がりました。
●海外移住先のハンガリー。初めてつくることが出来た”自分の居場所”
ー奥様の故郷でもあるハンガリーで初めての海外生活。パートナーがいるとはいえ、言葉の壁や生活はいかがでしたか?
そうですね。全て初めてのことだらけでしたね。
奥さんの故郷であるハンガリーの大学院に進学した僕は、経営学を専攻しながら、サイクルメッセンジャーのアルバイトもしていました。
そのアルバイトの大元である任意団体が本当に面白くて、そこでの経験が、今の自分に大きな影響を与えていると思います。
一見物騒?な落書きされた鉄の扉を入ると、グリーンが飾られた空間が広がっていて、任意団体のメンバーが運営しているおしゃれなカフェバーがありました。
彼らは、廃墟をリノベーションして活動拠点としていて、カフェバーを経営しつつ、そこに集う人たちで出たアイデアをもとに、様々な事業活動をしていたんですよね。
例えば、子育て支援や、コミュニティースペース、配達、ライブハウスなど、会話の中でこういうのがあったらいいよね。と生まれたアイデアをもとに、じゃあ実際にやってみよう。という感じで。
日本人である自分に対しても「どこから来たの?」と聞かれることもなく、普通に接してくれましたし、仮に言葉が通じなくても分かり合えるオープンマインドな人がほとんどで、人種・文化の違いを超えて、”他人を受け入れる”、”他人と関係を築く”という事を深く考えるとても良い機会でした。
配達のために自転車でお城まで行く道中、舗装道路から中世ヨーロッパの石畳に変わり、更に進むと、かなり勾配のある坂道になるんです。
カーゴバイクと呼ばれるMAX120kgまで貨物を載せることが出来る自転車に乗り、100%自分の足で漕いで坂道をあがるんですが、それはもうキツイ(笑)
石畳は凸凹ですので車輪が転がりにくく全然進めないんですよね、、
とにかく体も引き締まりましたし、足?太腿もふくらはぎも精神もバッキバキになりましたよ(笑)
でもそのアルバイトを通じて、ハンガリーという異国の地で仲間ができましたし、そこでも自転車メカニックとして重宝されましたし、家族でもない、友人でもない、会社でもない、”自分の居場所” と呼べる場所をつくることが出来たという経験をしました。
その社会的な事業を行う団体は、各部門の売り上げを一旦一箇所に集めて、団体に所属するメンバー全員に均等配分するという給料制を採用していたんですが、すごいと思いましたね。
これ程までに「みんながみんなのために働く」という組織があるんだと感動したことを強烈に覚えています。
卒業後はヨーロッパで就職先を探していたんですが、当時は世界中でまん延していたコロナの影響で、企業の採用担当者からは、国籍がヨーロッパ圏外の人を受け入れることを控えている、と言われてしまいました。
ーコロナの影響を受けてヨーロッパでの就業を断念?それからどうされたんですか?
ヨーロッパでの就業が難しい。だけど守っていく家族もいる。常に仕事先を見つけるべくアンテナを張っていましたね。
大学生時代のことですが、読んでいる日経新聞電子版に、ニセコ町の森林資源の活用推進プロジェクトについての記事に目が留まったことがありました。
その頃からニセコプロジェクトを知っていましたが、数年経ち、コロナ禍の就活時期に改めて、同プロジェクトの記事を目にしました。
そこにはプロジェクトが少し進んでいることが書かれていて、また興味を持ったんです。
結果2022年にニセコ町の地域おこし協力隊としてそのプロジェクトへ参加することになり北海道へ移住することになります。
●ニセコには面白い仕事があった。そして自然環境があった。
ニセコに興味を持てる仕事があることを知った頃、子どもを授かることが出来ました。
移住したのは、子どもが誕生し2ヶ月目のタイミングでした。
ハンガリーのブタペストに住んでいたときは都会暮らしで、家から徒歩4分にある駅から国境を越えられる高速鉄道に乗れたり、すぐ近所に巨大な公園もあって、利便性に優れていました。
それでも、子どもが生まれたことは、僕たちに気持ちの変化をもたらしました。
都市部環境の怖いところも目に付くようになり出し、より自然あふれる環境で子育てしたいという想いがありました。
とはいえ、なぜニセコに移住することになったか?と聞かれたら、子育て環境というよりは、ニセコに仕事があったからという方が答え方としては合っているかもしれません。
僕が面白そうだなと参加を決めたプロジェクトでは、ニセコ町産の木材を地域内で製材加工したり、町内の遊具や設備に活かしたり、地域事業者と休眠森林をマッチングをしたり、森林資源の活用推進に取り組むといった事業内容でした。
8月に帰国し、2022年9月からはニセコ町地域おこし協力隊として着任。農政課林業再生係へ配属をされ、活動を開始しました。
余談ですが、今思えばですけど、家族の入国に関しての手続きが、と・て・も・と・て・も 大変でした・・
どこからか凄いエネルギーが沸いていたと思います。
ー小さなお子さんと、子育てが始まったばかりの奥様とニセコへ移住することにハードルはなかったですか?
僕自身、北海道札幌市西区出身で、ホームゲレンデはコバワールド(現在のノヴェル・マウンテンパーク - Wikipedia)。
冬はよく友人家族とニセコに来て、ヒラフにあるコテージを借りて1週間滞在したりしていた(当時は冬も安価なところがあって普通に泊まれた)ので、ニセコの冬がどんな感じなのかもよく分かっていました。
子育てが始まったばかりの奥さんも ”日本の田舎” 、いわゆる、自転車で走っていて2時間なにも無いとか(笑)そういった風土についてはよく知っていたので、ニセコへ来ることに対し抵抗はなかったようですし、夫婦間でお互いに、子育てするなら自然あふれる環境がいいよね。と意見は一致していたことでハードルはさほどなかったですね。
■起業する予定はなかった清部さんが、ニセコ町で自転車修理業をはじめた。
日頃から自転車と触れ合い、自転車愛を語り、自転車で遊んでいる清部さん。
ーどうして【CYCLONIUM.(屋号:サイクロニウム)】自転車に関する事業を立ち上げようと思ったのですか?
元来、自転車の部品や鉄が大好きな僕が、奥さんをはじめ、旅先で出会ったひと、海外でのコミュニティ、仕事を通してたくさんの気付きを得たことで見方が変わり、いつのまにかニセコにおける自転車を取り巻く環境の可能性や、時代とともに発展しているサイクルツーリズムの中での自分の役割みたいなことを見出せた気がしたんです。
サイクルツーリストたちが使用するアプリでは世界のルートマップ上の宿泊施設を紹介するものがある一方で、ニセコ町で観光業を営む方の多くは、夏の集客をどうにかしたいと課題を口にしています。
ニセコは一大観光地ですが、サイクルツーリズムのルート上にあるにも関わらず見過ごされがちで、夏のニセコに何があるのかわからないと通り抜けてしまうエリアになってしまうことも…。
サイクルツーリスト達は、飛行機や船で移動して北海道に入ってくるパターンが多いので、まずは千歳や函館に上陸するのですが、そこは知っているけど、”ニセコ”は知らないという外国人は不特定多数いるようなんですよね。
”ニセコ” って何があるの?となってしまうと、パスして ”小樽”や”札幌” まで走ろうとなってしまう。日本縦断だから ”稚内” は知っているけど、中間地点は興味を持たれないこともあるといいます。
地域の観光課題と、サイクルツーリストにとっての課題。
この二つの課題がマッチしていることが見えた時に、サイクルツーリスト達が立ち止まってくれるような場所を作り、そこで自転車の修理も出来るように自分自身がやって、ニセコに立ち寄る機会を作り出すことに取り組んでみてもいいかなと思えたんです。
そんな風に考えてからは、羊蹄ニセコ自転車走行協議会の取組みを注意深く見るようになったりしました。
ニセコエリアに宿泊したら、たくさんのニセコ産の美味しいものを食べられて、温泉に浸かって旅の疲れを癒すことができる。地域の人と交流もできる。ーといった宿場町のような機能を活かし地域に経済波及効果をもたらすことが出来ると考えました。
そんなことを考えているうちに、ニセコに移住した時点では全く起業するつもりはなかったのですが、徐々に面白そうだな、やってみようと思ったんです。
いまは、仲のいい友人や仲間たちが困った時に相談してきてくれるので、修理したりメンテナンスしたりしています。
今後は、自然とニセコ地域住民の間で認知されると思うので、修理に来て欲しいと呼ばれたら自転車で駆けつけて、自転車修理ができたら良いなと考えています。
まずはヨーロッパの先進国のように自転車人口が増えて欲しいですね。
バスや電車など公共交通機関に自転車を積んで、移動した先で自転車に乗り買い物に行く。といった行動変容がひとりでも多くの人に起きて、ニセコ町の目指す豊かな自然環境を守っていける社会の実現に繋がるといいなと思います。
そしてニセコ地域から、ゆくゆくは北海道が自転車でもっともっと盛り上がるための面白い仕掛けをつくっていきたいと企んでいます!
ー清部さん、たくさんの魅力的なエピソードを長時間に渡ってお話してくださりありがとうございました!
今後が楽しみすぎます!ご活躍お祈りしております^^!
はい、楽しみにしていてください(笑) 。
僕も楽しんでやっていくので興味があるひとにはどんどん関わってもらいたいと思います。
皆さんにもそれぞれに合った自転車の楽しみ方を見つけてもっと身近なものにしていって欲しいです!
ありがとうございました。
(取材後記)
取材を終えると、不思議なもので自転車に乗りたくなってきてしまいました。きっと、このような感じで自転車の可能性や、取り巻く環境について語っているうちに周りをどんどん引き込んでしまうのでしょう。
清部さんに自転車をカスタマイズして作ってもらうことが出来たら、特別感が増して愛着を持ち使用することができそうです。
わたしは、スポーツバイクやMTBではなく、かご付きのミニベロが良いかな!と妄想しています
それぞれのスキを活かし地域に還元する。
シンプルで素敵なことです。皆さんは移住したらその土地でどんな好きを活かしたいですか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
p.s 取材日は初秋でしたが、記事を丁寧に捏ねて寝かせていたため投稿記事がずれていますが悪しからず。
(文:伊藤)
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