北海道ニセコ町で有志が連携したサステナブルプロジェクト「NIS-ECO」がスタートした件
こんにちは。ニセコ町役場でnoteを担当しています、赤星です。
このnoteでは、北海道ニセコ町で今話題の情報や、ここでしか話せないような裏話など…自由に発信しています。
今回はニセコ町内の事業者、行政、地域おこし協力隊などの有志が集まり、官民連携でニセコを持続可能な町として守り次世代へ受け継ごうとする、サステナブルなプロジェクト「NIS-ECO(ニスエコ)」についてご紹介したいと思います。
【CHECK】北海道新聞でNIS-ECOプロジェクトを紹介いただきました。
【CHECK】そもそもニセコ町ってどこ?という方はこちらの記事をご確認ください。
※なお、こちらのnote内で「ニセコ」と記載する場合は、ニセコ町・倶知安町・蘭越町のニセコ観光圏を指します。
⛄なぜニセコ町でサステナブルプロジェクトを立ち上げたのか?
スキーリゾート地として国際的に知られ、国内外から多くの観光客が訪れる北海道ニセコ町。パウダースノーと言われるフワフワとした雪は、世界に誇る雪質として世界中の方から愛されています。夏季には登山、カヌー、ラフティング等の体験型アウトドアスポーツも充実しており、通年型での観光リゾート地でもあります。
年間175万人(2019年度実績)の観光客が訪れるニセコ町は内閣府の「環境モデル都市(※1)」「SDGs未来都市(※2)」に選ばれており、近年は、持続可能な観光の分野でも、Green Destinations「世界の持続可能な観光地100選(2020・2021年度)」での表彰や観光分野における地球温暖化対策「グラスゴー宣言」への署名、国連世界観光機関(UNWTO)の2021年「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」での選出など、サステナブル観光への取り組みに力を注いでいます。
1)町内観光事業者のおよそ8割が「持続可能な観光が重要」と認識
ニセコ町が町内の観光事業者(※3)向けに行ったアンケート調査では、8割以上の事業者が「持続可能な取組が重要である」と回答しています。その理由として、「自然・景観・歴史・文化など地域資源を守るため」が95%と最も高い理由となっており、ニセコのパウダースノーを含む地域資源が自分たちにとっても旅行者にとっても、共に大切な資源であるという認識が分かります。
※3 ニセコ町内の観光事業者(アクティビティ、宿泊、飲食、土産・物産、交通、観光施設等)200社を対象に、持続可能な観光についての意識や取り組みについてアンケートを実施。うち96社が回答。
2)旅行者のおよそ7割が「サステナブルな旅は自身にとって必要」と認識
ブッキングドットコムが行った調査によると、国内旅行者のおよそ7割が「サステナブルな旅は自身にとって必要である」と回答しており、外国人旅行者ではさらに8割がそうであると回答しています。
さらに、およそ4割の国内旅行者は、「サステナブルな宿泊施設を特に探していなくても、サステナブルな宿があればそちらを選ぶ可能性が比較的高い」と回答しており、旅行者のサステナブルツーリズムへの意識の高まりが伺えます。
このように町内事業者、観光客共に、サステナブルな観光への関心の高まりが分かります。そうした背景をうけて、官民連携で町のサステナブルな観光を推進したいと発足したのが「NIS-ECO(ニスエコ)」プロジェクトです。
⛄NIS-ECOプロジェクトのビジョンや活動内容
NIS-ECOプロジェクトでは「本質的且つ持続可能なものとして、地域全体でニセコの観光・資源を守り次世代へ繋いでいく」というビジョンを掲げており、町が掲げる宣言や方針と方向性が一致するものとして、町内全体で取り組もうとしています。
1)町の関係者が連携、町全体で取り組む
プロジェクトの発起人であり、プロジェクト全体を総括するのはニセコミルク工房の高井裕子さん。ニセコで生まれ育ち、NPOニセコ未来サポート隊の代表としても、町のために活躍をしています。
高井さんは、数年前からニセコの観光に対してモヤモヤとした想いを感じていたと教えてくれました。「ニセコで観光業を営む者として、多くの観光客の方に来て欲しいのはもちろんですが、観光によってどうしても生じてしまうCO2やプラスチックゴミ等により、ニセコの観光資源が損なわれることへの課題感を感じていました。発生することは仕方ないですが、地域の観光事業者として、せめて削減やニュートラルな状態を目指せるように、ニセコの未来のために何か出来ることはないかと考えていました。」
そうした高井さんの想いに共感をした町内関係者が有志で集まり、ニセコ町の未来のために地域資源を守り次世代へ受け継ぐ取り組みとして、NIS-ECOプロジェクトが発足しました。メンバーには、現役の地域おこし協力隊を中心に、町の関係者も支援をしています。
ちなみにプロジェクト名称は、町内の方に分かりやすい名前を意識して、ニセコ(NISEKO)町の名前にECOを組み込ませた名前にしました。
2)観光庁の看板商品創出事業
また、NIS-ECOプロジェクトでは観光庁の「看板商品創出事業」の補助を受けてニセコのサステナブルな商品創出を目的に活動をしています。
SDGs未来都市、環境モデル都市であるニセコに、サステナブルな観光商品を看板商品として創出することで、持続可能な観光振興に繋げたいという目的です。
3)NIS-ECOが取り組む4つのカテゴリ
NIS-ECOプロジェクトでは、「①PRODUCT」「②COMMUNITY」「③ACTION」「④TOURISM」の4つのカテゴリに分類して活動をしています。
①PRODUCT:ホエイ洗剤、ニセコ未来寄付
①のPRODUCT(商品開発)では、ホエイ洗剤の開発を中心に動いています。高井さんがニセコミルク工房で仕事をするなかで、チーズを作るスタッフの手が綺麗であることに着目。牛乳からチーズを作る際に生まれるホエイ(乳清)に含まれるタンパク質はシミの原因となるメラニン色素を作るチロシナーゼの活性を抑えてくれる美白効果のほか、古い角質やくすみの原因となる老廃物をはがれやすくするピーリング効果もあり、保湿性や吸水性にも優れているので美肌効果が期待できるのだそう。ですが食用としては使用せず、廃棄することが一般的です。ホエイを廃棄せず、食器用洗剤に活用した商品開発を進めており、本年度中にリリースを予定しています。
その他には、ニセコ町内で販売されている商品の売上の一部を、植樹などニセコ町のサステナブルな町づくりに活かす寄付型商品「ニセコ未来寄付」もプロデュースしており、第一弾商品としては、ニセコミルク工房で販売するクッキーを未来寄付商品として現在販売中です。今後は町内で参画事業者を募り、町内で拡大をしていく予定です。
②COMMUNITY:脱プラ、不揃いのカッププロジェクト
②COMMUNITY(地域連携)では、地域おこし協力隊の鈴木恵里さんを中心に、地域の事業者と連携した取組みを進めています。コンセプトに、使い捨て商品の削減を掲げています。地球の大切な資源を使って、たった一度、限られた時間使用するためだけに消費されている“使い捨て消費”をできる限り無くしたいという取組みです。
例えばホテル事業者と連携した「脱プラ」プロジェクトでは、歯ブラシやカミソリ等の客室に設置されている使い捨てのアメニティ類を、可能な限りお客様に持ってきていただくことを促しつつ、どうしても必要な場合を考慮して、プラスチックのアメニティではなく竹歯ブラシや歯磨き粉を制作。価格が高くなりがちな竹歯ブラシですが、共同購入することで導入しやすくなり、今後は町内ホテル事業者への導入を進めていく予定です。また、これらにはNIS-ECOロゴをデザインし、取り組みの啓蒙にも繋げています。
その他には、「不揃いのカップ」プロジェクトでは、飲食店での使い捨て紙コップの廃棄抑制を目的に、町内飲食店にシェア用のマグカップを設置。マグカップ自体も、町内住民から自宅で使わなくなったマグカップを寄付してもらうことでリユース運動にも繋がっています。
③ACTION:植樹、間伐材の活用
③ACTION(未来に繋がる行動)では、地域おこし協力隊の鈴木健さんを中心に「ニセコの森や緑を守る」ことをテーマとした活動に取り組んでいます。町内での植樹や、間伐材を活用した取り組みなど、森と人との繋がりを作り、次の世代へニセコの森を引き継げるように活動をしています。
先月開催されたニセコ町のサステナブルな観光プログラム「ニセコサステナブル体験」では、参加者と一緒に、ニセコ町の曽我森林公園にトドマツの種苗を植樹しました。植樹はその後の管理も重要で、プロジェクト内では町内事業者と連携をして、「植えた責任・育てる管理」を継続していきます。
④TOURISM(観光/学習)では、ニセコのサステナブルな観光プログラムを企画する取り組みをしています。
先月開催した、ニセコ町のサステナブルな観光プログラム「ニセコサステナブル体験」では道内外から多くの方にご参加いただき、地産地消を意識した食事や植樹体験、森づくりの講話や、森歩き体験などを開催しました。(こちらは次回note記事で詳しくレポートします!)
そのほかにも、ニセコ高校と東京の品川女子学院では、ニセコ町のサステナブルな観光ツアーを企画する合同授業を開催しており、ニセコと東京という環境の異なる高校生が多角的な目線で企画を進めます。企画したツアーは、ニセコ町リゾート観光協会で2023年度夏季商品としての販売を目指しています。
次回note記事では、11月に開催したニセコ町のサステナブルな観光プログラム「ニセコサステナブル体験」について詳しくご紹介したいと思います!
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