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ニセコ町の「移住」と「起業」の話 /Vol.2 奥村頼子さんインタビュー

北海道ニセコ町は人口5,000人程の町ですが、過去20年間に渡って人口が増え続けているという珍しい町です。特に最近は、移住だけではなく起業する人も増えており、2021年4月~9月期では昨年同期比で法人設立数の増加率が全国町村で6位と、国内でも高い起業率になっています。

そうした移住者、起業家の方へ「ニセコ町で移住、起業って実際のところどうなの?」というリアルな話を聞いちゃおう!という企画です。

ニセコ町内の移住・起業熱とその背景については、初回記事でも紹介しているので、読んでみてくださいね。

【過去記事】
移住と起業の話Vol.1「ニセコ町でネイルサロンを開業したい!飯田絢香さんインタビュー記事」はこちらから。


ニセコには、才能あふれる多くのクリエイターがいることをご存知でしょうか?ニセコの雄大な自然のなかで、四季折々に咲く花や緑、生き生きとした動物たちからインスピレーションを受け、素敵な作品が生み出されています。
今回は、ニセコでアーティストとして活躍する奥村頼子(おくむらよりこ)さんにインタビューしてきました。2016年にニセコ町へ移住され、地域おこし協力隊として3年間の活動を経て、アーティストとして独立。

「なぜニセコ町に移住しようと思ったのか?」
「ニセコ町に移住して感じた魅力や、苦労したことは?」
「アーティストとしてどんな活動をしているの?」
「これから考えているチャレンジとは?」
「地方移住を検討されている方へのアドバイス」
などなど、根掘り葉掘り聞いてきました!

※なお、こちらのnote内で「ニセコ」と記載する場合は、ニセコ町・倶知安町・蘭越町のニセコ観光圏を指します。



奥村頼子さん
滋賀県大津市出身。
2016年にニセコ町へ移住。地域おこし協力隊としてニセコ町で、ニセコリゾート観光協会や中央倉庫など3年間の業務を経てニセコ町で個人事業主として独立。6次産業商品のパッケージデザインやイベントのアートワーク等、アーティストとしてニセコ地域で精力的に制作活動を行う。



小さい頃から「絵を描くこと」が生活の一部

ロンドン芸術大学に在学中。毎日デザイン制作に没頭


赤星:
ニセコでアーティストとして活躍されている奥村さんですが、いつから芸術に興味があったんですか?

奥村:物心がつく幼少期から絵を描くことは好きでした。家の近くに牧場があり、よく牛の絵を描いていたそうです。小学校に入る頃には、絵画コンクールで受賞するようになり、その頃からアーティストになることを意識していたと思います。高校からは芸大受験のため画塾に通うようになり、その後、京都教育大学デザイン科に進学し、デザインの基礎を学びました。大学卒業後は、より本格的に現代アートを学びたいと考え、ロンドン芸術大学へ留学しました。

赤星:ロンドン芸術大学と言えば世界屈指の芸術大学だと思いますが、ロンドンでの生活はいかがでしたか?

奥村:実は小学生の時に少しだけイギリスで生活していたこともあり、ロンドンでの生活も甘く捉えていたんですが、実際はとても大変でした(笑) 大学の勉強についていくのもやっとのなか、言葉も文化も違うイギリスの地で、寮の契約手続きから毎日の食事や買い物…社会の仕組みも分からないなかで対応することは想像以上に大変でした。そうして4年間をロンドンで過ごし、2014年に日本へ帰国。同年冬には元々スノーボードが好きだったこともあり、ニセコでリゾートバイトをしながら制作活動をしていました。バイト中に、ニセコは冬だけではなく夏も楽しい。来年の夏、カウパレードというイベントがあることを聞き、2015年夏はカウパレードのアーティストとしてニセコに滞在しました。夏のニセコでしか見られない自然や動物たちから受けるインスピレーション、さらにはグローバルで多様性のある風土に魅力を感じ、「この土地でアーティストとして永く制作活動に取り組みたい」と感じるようになり、移住を決意。その際、ニセコでトドマツ精油の商品開発をしているhikobayu(ヒコバユ)の澤田夫妻に地域おこし協力隊という制度があることを伺い、翌年1月にエントリーして、5月から地域おこし協力隊としての活動がスタートしました。


自然のなかで感じるインスピレーションを作品に

地域おこし協力隊時代は、イベントのお手伝い等を通して、地域の方々と交流

赤星:地域おこし協力隊ではどんな仕事をされていたんですか?

奥村:
2016年5月から活動を開始して、最初の配属先は中央倉庫群でした。当時、中央倉庫群はまだ立ち上げたばかりで、カフェをやっていたり、今より営業時間も長く22時まで空けていたり、いろんなことにトライしている最中でした。私はカフェのメニュー表のデザインや、名刺のデザインなどクリエイティブ面で業務を担当していました。その後、もっとニセコの観光面でもクリエイティブで何かサポートできたらと思い、2016年10月にニセコリゾート観光協会へ異動。パッケージツアーのフライヤーやクーポンチケット、観光MAPのデザインなど幅広く制作を担当しました。その他にも町内でのイベント等でアートワークの担当させてもらえるようになり、観光協会の業務と協力隊自体のプロジェクトなどで忙しいなかにも充実した時間を過ごせました。その頃から、観光協会の業務以外にも、町民の方からデザイン業務の相談をしてもらえるようになり、地域おこし協力隊を卒業するタイミングでは、アーティストとしての収益だけでやっていけるようになっていました。

赤星:素晴らしいですね。2019年に協力隊を卒業してからは、アーティスト活動以外だけで、他に何か仕事としては携わっていないのですか?

奥村:基本的にはアーティスト活動だけですが、夏限定で五色温泉のインフォメーション業務を担当しています。五色温泉はニセコアンヌプリとイワオヌプリに挟まれた山間にあり、温泉の周辺には高山植物のお花も広がっていて、温泉だけじゃなく景色も楽しめるのが魅力です。私は五色インフォメーションセンターで情報発信を担当していて、山を歩きながら自然を眺める時間は自分のアーティスト活動への刺激にも繋がっています。

奥村さんが働いている五色インフォメーションセンター。夏は仕事の合間に五色温泉周辺を歩きながら、自然に触れる時間を楽しんでいるそう



地方の魅力は、個人の価値観を軸に仕事がしやすいこと

奥村さんが手掛けるデザインブランド「nasuninjin(ナスニンジン)」より


赤星:
地域おこし協力隊を卒業後は、nasuninjin(ナスニンジン)というアーティスト名でも活動されていますが、nasuninjinの名前の由来は何ですか?

奥村:実は地域おこし協力隊2年目の段階で、nasuninjin ARTS &
 Designとして開業したんです。nasuninjin自体は、ニセコで野菜のゆるキャラを作りたいなとぼんやり考えていたことがあり、その時、野菜ファイブという5人の野菜キャラを想像したんですが、ナスニンジンはそのキャラクターの1人です。他にもトマッコリーやネギもろこし等のキャラクターもいます。あくまで私の頭のなかだけにいる架空キャラクターですが(笑)

赤星:もしかしたら会社名がnegimorokoshi ARTS&Designだったかもしれないですね(笑)ぜひ野菜ファイブ、リリースして欲しいです。
最近のデザイン業務としては、どんなことを担当されているんですか?

奥村:ちょうど今だと、ニセコ町の斎藤農園さんのミスニセコの壁画デザインを手掛けています。その他にも道の駅ニセコビュープラザで物販もしていて、自分でデザインしたマルシェバックや手ぬぐい等のグッズを販売しています。あとはニセコモイワスキー場のベルトコンベアリフトに絵を描いたり、今年9月に開催されるニセコエリアの料理の祭典「オータムフードフェスティバル」のアートワークも担当していたりします。

斎藤農園さんのミスニセコの壁画デザイン
ニセコモイワスキー場のベルトコンベアに絵を描いている奥村さん
道の駅で販売している奥村さんがデザインしたマルシェバックと手ぬぐい。



赤星:
幅広くアグレッシブにニセコ地域のクリエイティブを担当されているんですね。奥村さんにとって「働くこと」とはどんなことですか?

奥村:私にとって働くこと、つまり「絵を描くこと」は、息を吸ったり食事をしたりすることと同じように生活の一部のようなものです。ただ、それを自分がしたいままに描いているだけでは趣味の領域であり、仕事には繋がらないので、クライアントが求めている形に合わせながらアウトプットできるように日々意識をしています。そのために、まずは仕事の依頼を受けたら出来る限り深く理解できるようクライアントの価値観やニーズをヒアリングする作業に時間を割くようにしています。ニーズを理解するためにも、日頃からニセコエリアの自然だけでなく人々の些細な変化や様子にも目を向けるようにもしていますね。なので、私にとって働くことは、ここからここまでが仕事の時間で、ここからはプライベートの時間のように分けられているものではなく、ニセコで生活している毎日の時間のなかで、“自然に過ごしていること”が働くことに繋がっていると思います。

赤星:遠方のアーティストではなく、ニセコ在住のアーティストだからこそ描けるデザインという魅力に繋がっているんですね。ちなみに、奥村さんにとって、「地方で働くこと」については、どのように感じていますか?

奥村:地方は都会と違って情報量が圧倒的に少ない分、流行に左右されにくいですし、それはつまり個人の価値観を軸に仕事がしやすいと感じています。それは私のようなアーティストだけではなく、あらゆる業種の人にも当てはまることだと思います。都会と違って地方は人材もリソースも少ないですが、その反面、競合しにくく起業しやすい利点があると感じています。ニセコに起業家が増えているのは、まさにそうした背景もあると思いますね。



深く考え過ぎず、まずはニセコを楽しむ

ニセコのパウダースノーを楽しむ奥村さん

赤星:最後に、これからニセコへの移住や起業を考えている方へアドバイスをお願いします。

奥村:最初からニセコで何をしようとかあまり深く考えずに、まずはニセコを楽しんで欲しいと思います。そのなかで、自分なりの視点や楽しみ方を見つけることが大事だと思います。私の場合は、朝から温泉に入ってサウナを満喫したり、冬は朝からスノボをたのしんだり、動物や植物を観察したり、曇を眺めたり…何気ない日常のなかにある自分だけの楽しみ方、特別な時間を楽しんでいます。
そのように日常を楽しんでいれば「ここが足りない」「もっとこうだったら良いのに」と感じるポイントが出てくると思います。
その足りない点を、自分で補うようにすることでビジネスへ繋がっていくと思いますね。


奥村さんインタビューへのご協力ありがとうございました!

奥村さんに初めて会った時に感じた印象は「なんて楽しそうな人だろう」でした。自分が本当に好きなことや天職と言える仕事を見つけることが困難と思われがちな時代のなかで、自分が好きなことをとことん突き詰め、多くの作品を生み出している姿はとても魅力的です。
アーティスト活動を通して、ニセコの自然の美しさや動物たちとの共存という魅力を発信している奥村さん。今後の活躍にも目が離せません。


ニセコ町役場1階に飾られている奥村さん作品「白い森/The White forest」(2021年)

ニセコ町役場やニセコ中央倉庫群、その他にもニセコ町内のいろんな場所で奥村さんの作品に触れることがあると思います。ぜひニセコにお越しの際には探してみてくださいね。


奥村さんへお仕事のご依頼は、nasuninjin公式Instagramからメッセージでお問い合わせください📩

🍆奥村頼子さんのポートフォリオはコチラから
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ニセコ町の「移住」と「起業」の話シリーズ
では、ニセコで移住・起業された素敵な方を今後も紹介していく予定です。
私のことも取材してほしい!というニセコ町在住の移住・起業者の方も募集中ですので、ぜひご連絡をお待ちしております!(自薦他薦問いません)

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